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岸田文雄首相が英国のグラスゴーで31日から開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)への出席を決めた。首相就任後、初の外国訪問となる今COPの位置付けは重い。
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ)に向けた「30年目標」の強化が焦点となっている。
国連機関は、さらなる温暖化予測を打ち出しており、会議では日本に対しても排出量削減の積み増し要請があり得る状況だ。
今COPでは冒頭に首脳会談が置かれている。岸田氏はその最終日の11月2日に到着予定だが、英国はグレタ・トゥンベリさんを招くなど削減への「高い野心」を促す準備を整えて待っている。
日本が国連に提出している30年度目標は46%減(13年度比)である。小泉進次郎前環境相の建言で決まったこの数値は日本の実情に照らすと高すぎる目標なのだ。
これ以上の上積みは日本の産業や日常生活の崩壊につながる。岸田氏は、この点を重々承知して出席してもらいたい。
わが国は世界に先駆けて省エネを進めてきたため、削減余地が乏しいことなどを参加する約120カ国・地域の首脳に、しっかり説明すべきである。世界全体の30%に迫る二酸化炭素を排出している中国に対し、日本の排出量はその10分の1にすぎないのだ。日本の先駆的努力と現状を明確に語り、新首相の確たる存在感を世界に示す好機である。
議長国の英国は石炭火力発電の全廃を強く求めている。先進国は30年までに、途上国は40年までに、との年限だ。先週決まった日本の新エネルギー基本計画では30年度の電源構成で石炭火力が19%を占めている。
この件でジョンソン首相から苦言が呈された場合でも、日本は英国とエネルギー環境が異なることを膝詰めで理解させる気概を、岸田氏には持ってもらいたい。
50年のカーボンニュートラルの実現に向けて、日本が最適の技術を保有していることを岸田氏はCOP26の国際舞台で披露すべきである。抜群の安全性を誇る「高温ガス炉」の活用だ。
発電と同時に水素の製造も可能で、熱源としても用途が広い。そして小型モジュール炉でもある。米英両国ともこの次世代原発に強い関心を寄せている。
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2021年10月30日付産経新聞【主張】を転載しています